日本の食糧自給率を上げるには、何をすればいい?

食糧自給率の低下が最近のニュースでよく取り上げられている。
もしかしたら来年の社会の時事問題で取り上げられるかも知れない。

私は、農学部出身で、こういう問題は専門分野だから、ちょっとまとめておこう。

農業の歴史なんかは、以前に作ったサイトがあるので、こっちを見て欲しい。学校で教えてくれない農業の話がよく分かると思う。→ボクが大学で学んだ農業のこと、環境のこと

でさて、現在、食糧自給率は39%だということだけど、これはかなりウソっぽい。というのも、自給率で問題になるのは、ふつう穀物自給率だからだ。

穀物自給率は、30%をとっくに切っていて、今は27%だ。
だから今回40%を切ったと言って大騒ぎしている自給率は、カロリーベース(熱量)の話だね。

しかしこれも最近急に下がったように報道されているが、実はここしばらくはずっと40%だった

農林水産省・食糧自給率推移データを見ると、昭和35年から45年間で、79%から29%に落ちている。つまり毎年1%弱ずつくらいのペースでジワジワ下がってきて、ここ最近の10年くらいは下げ止まった状態だったわけだね。

だから今回、自給率がニュースになった原因というのは、自給率が下がったからじゃなくって、輸入が難しくなったという話だね。

石油の価格が大幅に上がって、しかもたぶん下がらない。現代農業には、機械を動かす燃料が必要だけど、その燃料代が暴騰した。

そして、ものすごい量の穀物生産を続けて輸出してきたオーストラリアが、100年に一度の干ばつになって、世界的に穀物の備蓄がなくなった。それから中国やアメリカと言った国が、肥料の輸出を大幅に制限しだした。
アメリカでは、トウモロコシを原料にして燃料を作り始めたから、穀物だって、いつまで輸出してくれることやら...

となると、日本は外国から食糧を自由に輸入出来なくなる。少なくとも、今までみたいな安い値段では、もう食糧は買えない。

じゃあ、日本で食糧はどれくらい作れるんだろう?って省みたら、食糧自給率が40%を切っていた。どうしよう...って言う話だ。


食糧自給率を上げるには、米作りをやめたほうがいい

日本の食糧自給率が下がった最大の原因が何かというと、日本農業が、小麦や大豆の生産を放棄したからだ。そんでもって、米ばっかり作っていたからだ。

データ的に言うと、米の自給率は昭和35年から、1993年以外はずっと100%前後を維持している。その一方で、昭和35年には40%あった小麦の自給率は、今はもう10%台だ。


  • 米:95%~100%

  • 小麦:13%

戦後の日本の農政というのは、米作りにばっかり集中的に補助金を出して、しかも高値で買い取ってきた。昭和24年から最近までずっと。

戦時中にできた、食糧管理制度というしくみを使って、とにかく米作りに強いインセンティブ(報償・刺激)を与えてきた。

小麦も管理はしていたけど、そんなに高値で買い入れなかったもんだから、それまで小麦を作っていた農家まで、小麦をやめて米作りを始めるようになった。※米だけで食えるもんだから、2毛作をやめた。

だから米はたくさん国内で生産されるようになったけれど、小麦は逆にドンドン減っていったわけだね。(小麦 → 米)

でも逆に、日本人は小麦を多く食べるようになった。うどん、ラーメン、パン、パスタ、ピザ...、こういうモノが増えたわけだ。

時期的に言うと、昭和35年くらいから食用油の消費量がグッと伸びていて、この辺から食生活が変わってきたという。これは、邱永漢先生の本に書いてあったことだけど。

日清食品がチキンラーメンを売り出したのもこの頃(昭和33年)で、このあたりから中華料理や揚げ物(トンカツ・フライ)などの洋食がグッと増えた。食の欧米化なんていうけど、中華料理の影響も大きいね。

こういう食生活というのは、東京や大阪などの都会では、大正時代に流行ったものだ。これが全国に広まっていった。で、日本国民は、小麦をたくさん食べるようになっていったわけだ。(米 → 小麦)

だから、昭和35~40年あたりで国民の消費の変化にあわせて、農業生産の方針を変えていれば、こんなに自給率は下がらなかったはずなんだ。
だって米の自給率はこのころ98%~100%で、もうそれ以上米を作る必要がなかったからね。

なのに政府は米作りばかりにお金を出して、日本の農家は米ばっかりつくってたわけだ。食べる人のことなんか、全く無視してね。

それが結局、今の自給率低下につながってしまったわけだ。


食糧自給率を上げるには、小麦・トウモロコシ・大豆・飼料作物・肥料


食糧自給率が低くて危ない...ってことで、なんかまた、減反をやめるとか言う話が出てきているけど、とんでもない話だ。

減反をやめるってことは、そこでまた米を作ろうって言う話だけど、自給率を下げているのは米じゃなくて、小麦や大豆なんだ。それから家畜を飼うための飼料作物(トウモロコシやいろいろな麦)と肥料なんだ。

農業には、窒素・リン酸・カリというリービッヒが見つけた三大肥料が必要なんだけど、特にリン酸は輸入に頼っていて、しかもドンドン値上がりしている。
JAも、今度、肥料の値段を倍くらいにするというけど、たぶんこれからまだ何倍も上がるだろう。

減反をやめたら、肥料が安くなるか?って言えば、そんな馬鹿なことはないよね。
減反をやめたら、小麦やトウモロコシの生産が増えるか? って言えば、そんな馬鹿なことはないよね。

食糧自給率を上げるには、小麦・トウモロコシ・大豆・飼料作物・肥料を、日本国内で生産しないといけないってことなんだけど、農家は嫌だと言っている。ココが大問題だ。


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