ピアジェの認知発達論

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家の手伝いや雑用、工作やパズルをしない子供は、成績が伸びない。

 

その理由は、ジャン・ピアジェの認知発達論で説明できる。

 

ピアジェはスイス出身の20世紀の心理学者で、動物の研究から児童心理学へと研究の幅を拡げた人物だ。

 

ピアジェは自身の3人の子供を2年間、じっくり観察することによって、子供がどういう風に知的成長を遂げるかを考えた。

 

そうして知的成長には、次の四段階を順番に踏んでいくとした。

ピアジェの4つの発達段階。
  1. 感覚運動期(0歳から2歳くらい)
  2. 前操作期(2歳くらいから7歳くらい)
  3. 具体的操作(7歳くらいから11歳くらい)
  4. 形式的操作(11歳くらいから)

子供はシェマを創りながら成長する

ピアジェの理論では、「シェマ」という用語を多用する。

 

シェマはフランス語で、英語ではスキーマとかスキームと呼ぶ。

 

「大まかな図式」とか「心象」とか「おおまかな概念」といった意味合いだ。

 

人間は、物事を知るとき、新しいシェマを創る。

 

たとえば初めて白いネコを見た時、ネコというシェマが頭を創られる。

 

ただ、最初に出来たシェマは、それだけでは何の知識にもならない。

 

この時点では、白い小さな四つ足の生き物としか分かっていない。

 

そしてネコというシェマが出来た後に、別の茶色いネコを見たとする。

 

このときに子供は、「これってネコなのかな?」と言う風に考える。

 

自分の持っている様々なシェマの中から「ネコ」を取り出して、当てはめて考えるわけだ。

 

こういう風に、自分の持っているシェマを、未知のモノに当てはめてみることを「同化」と呼ぶ。

 

そうして茶色いネコもネコだとわかると、「これもネコなんだ」というふうに、ネコのシェマを書き換える。

 

こういう風にシェマを書き換えることを「調節」と呼ぶ。

 

さらには、同じ大きさの黒い小型犬を見て、「これもネコなのかな?」とか考える。

 

そしてそれが「犬」だと教えられると、「これはネコじゃなくて、犬っていうんだ」という風に、犬のシェマが創られる。

 

それと同時に、猫と犬が違うものだと理解して、それぞれのシェマが書き換えられる(調節)。

 

つまり人間は、

シェマ → 同化 → 調節 → 新しいシェマ

と言う風に、知識を身につけていくというわけだ。

子供の成長の段階(1) 生まれてから学校に上がるまで

 

感覚運動期

生まれてから2歳くらいまでは、モノを触ったり、叩いたり、舐めたり、揺すったりしてシェマを創る。

 

ガラガラを触って音を出してみたり、積み木を積んでは壊してみたり、コップから水を流してみたり…と、身近な行動で周囲に存在するモノを理解していく。

 

また、リンゴやミカンのイラストを見て、リンゴやミカンだと分かるようになっていく。

 

さらに親や兄弟の真似をすることで、少しずつ成長していく。

 

前操作期

2歳から7歳くらいまでは、言葉を話し出し、自分の思ったことを言葉に出来るようになる。

 

絵本が大好きな時期で、絵本の話と現実の世界が感覚的につながっているという。

 

そして「ごっこ遊び」をよくするようになる。

 

女の子であれば、人形やぬいぐるみを使って、1人でごっこ遊びをし始めるし、男の子であればヒーローごっこなどをし始めたり、車などのオモチャを使って遊び出す。

 

ごっこ遊びは、何かを別のモノに見立てると言う行動で、実際に存在する物体を、自分の想像している別のモノとして扱えるようになるわけだ(アニミズム)。

 

自分と他人という区別をつけ始め、自分と自分以外に様々な役割を与えて、演じることでそれぞれの役割を理解する。

 

他人とごっこ遊びをすることで、喧嘩したり意見が衝突すると言うことを経験し始める。

 

しかしこの頃は、自己中心的に振る舞い、他人も自分と同じように思っていると考える。

 

要するに、他人の気持ちとか、まだ分からない時期なんやね。

子供の成長段階(2)小学生になってから

具体的操作期(7歳から11歳くらい)

小学校に上がるくらいからは、具体的操作期と呼ばれる段階に進んでいく。

 

具体的操作とは、実際に存在するモノを色々動かす事によって、物事を理解したり、考えることだ。

 

数の概念や、モノの比較ができるようになり、他人と自分との区別がつき始める。

 

小学校では、3年生までは、身近にあるモノを扱って勉強を進めるが、4年生くらいからは、面積や体積、重量や速さと行った、抽象的な勉強に移行していく。

 

教育界には「9歳の峠」だとか「10歳の壁」という言葉があるが、これは抽象的な概念を理解できない子供が増え始める年齢ってことらしい。

 

子供にとって、長さは直感的に理解できる量なのだが、面積や体積は抽象的で理解しづらいものなのだ。

 

形の違うコップに、同じ量のジュースを入れたとしても、どっちかが多く見えたりするから、きょうだいで喧嘩になりがちナノもこの時期だ。

 

抽象的操作期

11歳くらいからは、抽象的操作期とよばれる段階に入る。

 

抽象的操作とは、実際にモノを動かして考えるのではなく、頭の中で色んなモノを動かして考えることだ。

 

もちろん実際には、完全に頭の中でモノを考えるわけではなく、指を折って数を考えたり、紙に絵を描いたりしつつ、様々なことを考える。

 

計算で言えば、筆算と暗算の両方を使って考える、という感じか。

 

この抽象的操作では、具体的操作期に経験して得た様々なシェマが重要になる。

 

たとえばネコと言っても、人によってそのイメージは様々だ。

 

実際に猫を飼っていた経験がある人や、ネコに何度も触ったことがある人、猫を触ったこともない人とでは、ネコに対する理解の度合いは全く異なる。

 

猫を飼っていた経験がある人に取っては、ネコは毛がすごく抜け落ちて衣服につくとか、たまに毛玉を吐いて汚いとか、糞が臭いとか、夜中に突然走り回ったりするとか、発情期になると唸るとか、そういった行動も含めて猫を理解している。

 

しかし猫を触ったことがない人に取って、こういった行動は全く経験が無いので、理解できない。

 

犬や他のペットを飼ったことがある人であれば、想像して理解することも可能だろうが、ペットや生き物を飼った経験が無い人に取っては、全く腑に落ちないのだ。

中学生になると、イメージ力のあるなしが成績を分ける

幼児期から小学校中学年までに、具体的にモノを使って遊んだり、家の手伝いや雑用をしたり、工作やパズルをしたりという経験が、勉強にも大きく影響する。

 

ある体験から得た知識を、別のモノに当てはめて使うことを「援用」と呼ぶが、勉強以外で経験した様々なことが、勉強に援用されるのだ。

 

さっきも書いたが、小学校4年生以降は、抽象的な概念の学習が進む。

 

抽象的な概念の学習には、それを理解するための具体的な経験の援用が重要になる。

 

たとえば「時速80kmで進んでいる電車」と言われたときに、電車が好きな子供は、そのイメージが頭にパッと浮かび上がるが、全く興味が無い子供には何にも思い浮かばない。

 

電車が好きな子供なら、「急行電車かな」とか「都会の私鉄電車なのかな」などと、様々な具体的なイメージがわき上がる。

 

しかし興味が無い子供には、「時速って何?」「80kmって何?」などと、全く実感が湧かない。

 

この「イメージできるかどうか」という差が実は、勉強や成績に大きく影響する。

 

イメージできることは理解がドンドン進むが、イメージできないことは、やる気も起こらないから、当たり前だ。

 

そうして、小学校時代に様々な経験を積んだ子供と、ただ家で机に向かって勉強させられてた子供とで、大きな差が出来てしまう。

 

そしてそれが中学校以降の学校の勉強の成績の差となって現れる。

 

中学受験を頑張って中高一貫私学に進学したのに、成績が低迷して高校進学を拒否される子供は、たいていそういう感じだね。


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