物語文の主人公の性別と中学受験
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最近、女の子が主人公の問題文が多くなった。
物語文というと、以前は小学生の男の子が主人公の出題が多くて、女の子にはちょっと難しいケースが多かった。
学校の教科書も男の子目線の物語文が多いし、中学受験用の国語の問題集に載っている物語も、男の子が主人公の文章が多かった。
男の子の社会には、男の子同士の独特のルールや考え方があるので、男の子が主人公の出題だと、女の子にはちょっと不利かなと、思っていた。
中学受験の国語のテーマの一つは、「他人の気持ちがわかる」といものなのだが、そうなると主人公の性別は結構大きい。
もちろんそれは共学校を受験する際の問題なのだが、練習問題として男の子目線の物語文ばかりだと、女子校の国語の出題に対応できないかもなあと思っていた。
しかし、久しぶりに中学受験の生徒を担当することになって、国語の問題集を見てみると、逆に女の子が主人公のお話ばかりになった印象だ。
これって一体どういうことなんだろうか。
女の子が主人公の物語文が少なかった背景
女の子が主人公の物語文を使った問題が増えた背景には、色々あると思う。
一つには、女性の作家さんが、女の子を主人公にした(群像劇的な)小説をたくさん書き出した、ということが挙げられるだろう。
以前、男の子が主人公の物語文の出題が多かった原因の一つには、女の子が主人公の人気小説が少なかったからかもしれない。
男の子が主人公の小説や短編は、直木賞作家や椎名誠・重松清など著名作家が色々書いていて、人気もあるし使いやすかった。
そして男の子が主人公の場合、やりたいことがハッキリしていたり、ズケズケと話したり文句をいうやつが色々いたりするので、「他人の気持ちがわかるかどうか」という国語のテーマに沿った話になりやすい。
一方、女の子が主人公の小説自体も、それなりにあったのだろうが、入試問題として使いにくかったのかもしれない。
女の子は、どちらかというと自分の意見ややりたいことをハッキリ言うのは、親だとか親友などの特定の相手だけだったりして、ウチにこもりやすい。
そしてモノローグ(主人公の女の子目線で語られる形)だと、客観性が弱くて入試問題として使いにくい。
そういった理由から、男の子が主人公の物語文がよく使われていたのだろう。
しかし近年は、辻村深月(つじむら みづき)さんや宮下奈都(みやした なつ)さんなどを始めとする女性作家の短編が、よく取り上げられている。
中学受験の出題で使えるような「ちょうどいい」文章
中学受験の出題で使えるような「ちょうどいい」文章というのは、難しい。
さらに、入試問題はそれぞれの中学が作るため、共学校・男子校・女子校それぞれで使える物語文は限られてくる。
物語文に使える題材は、小学生が想像できるような舞台背景や、人間関係の話でなければいけない。
そのため、家族の話や、学校が舞台の話が多くなる。
そして男子校では、男の子が想像できるような、野球やサッカーなどのスポーツ活動が舞台となるような物語文。
女子校では、女の子が興味ありそうな習い事(ピアノ、バレエなど)に関わる話…というイメージだ。
ピアノやバレエ教室を舞台にしたような物語文は男子校では出ないし、女子校で野球やサッカーのチームの物語の話は普通出題されない。
そして共学校では、そのどちらでもなく男子も女子も興味がある環境を舞台にした話が選ばれる。
こうなると、小説がたくさんあったとしても、使える物語を選ぶのは難しいよね。
なので以前は、小学生の男の子が主人公の物語文が多かった。
重松清さんの小説とか、椎名誠さんの「岳物語」とか、頻出だったね。
しかし最近は女の子が主人公の物語が、題材としてよく使われるようになった。
その背景には、時代の変化もあって、昭和の頃の物語が使いづらくなったということもある。
今の小学生は、男の子でも野球をやったこともないし、ルールを知らなかったりするしね。
その結果、以前よく使われていた男の子が主人公の小説が使いにくくなって、逆に21世紀に入ってからデビューした女性作家の作品が、多くなったということなのかもしれない。
そんな中でも重松清さんの物語は未だに利用されているのは、すごい話。
60歳になっても、まだ小中学生を話題にした新作を出し続けているせいだろうけど、やっぱすごいね。
中学受験でよく使われる作家の本
辻村深月 通販(楽天市場)
宮下奈都 通販(楽天市場)
重松清 通販(楽天市場)
重松清さんの小説は、未だに入試問題としてよく使われている。30年前と時代が全く変わってしまったのに、使われているのは驚異的。