十年経てば、校名も偏差値レベルも変わる
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中学受験生の勉強を、十数年ぶりに見るようになって驚いたことが色々ある。
まず、女子校が共学化して、校名も変わった学校が多いこと。
次に、以前は偏差値55くらいだった学校が、偏差値65以上になってたりすること。
首都圏模試センターの偏差値表を見て、あれ、あの学校はどこにいったんだろう?といろいろ探すのだけれど見つからず、調べてみると校名が変わっている。
また校名は変わっていないが、思っている偏差値より遥かに上にランクされていて、なかなか見つけられない。
手頃なおすすめ先だった学校が、十数年ぶりに見ると偏差値60以上のグループにいて、もはや手頃なおすすめ先ではなくなっていたりする。
偏差値レベルが高くなってしまうと、入試問題も難しくなるので、過去問も練習台に使えなくなる。
入試問題の変化
学校名や偏差値レベルの変化もいろいろあるが、入試問題の変化も色々びっくりする。
たとえば女の子がの主人公の物語が多くなったこと。
以前は重松清さんとか、灰谷健次郎さんとか、井上靖さんの「しろばんば」、椎名誠さんの「岳物語」とか、男の子が主人公の物語が中学受験の定番だったように思うけれど、今や男の子が主人公の物語はマイナーになった感じだ。
とあるサイトで、中学受験で出題される作家のランキングが載っていて、そこには辻村深月(つじむら みづき)さんや宮下奈都(みやした なつ)さんが一位二位に並んでいた。
お二方とも2000年以降にデビューした作家さんで、女性の方。
三位にかろうじて重松清さんが登場するが、重松清さんは1991年デビューだから、もう30年以上前の作家さん。
今でも中学受験に題材として使われているのは、作品に普遍性があるというより、現在も小中学生の話を書き続けているから、ということらしい。
こういうふうな頻出作家のランキングが変わった原因の一つには、古い作家さんの小説は、出題しつくされているということが挙げられる。
つまりあちこちの学校ですでに使われていて、中学受験用の問題集にもたくさん載っている小説は、避けられていく。
なので十年も経てば、中学受験で人気の作家さんも入れ替わるってことで、そんな中で重松清が生き残っているというのは、すごい話だね。
もはや昭和の物語は時代劇
入試問題の国語に使われる作家さんが入れ替わったもう一つの原因が、舞台背景が現代とかなり変わってしまったということにある。
一言で言ってしまうと「昭和の物語は、もはや時代劇」ってことだ。
時代劇になってしまった小説は、今の小学生には理解しがたい。
学校には必ずあった、ガリ版印刷だとか、わら半紙。
アルコールランプや石綿網、プリントなどを燃やす焼却炉。
赤チンやヨードチンキも、もはやなくなった。
レコード盤、カセットテープ、ラジカセ。フロッピーディスクですら、もう誰も知らない。
すでになくなってしまった物も多いし、昔は貴重品だったものが、今はもうコモディティ化して、100円ショップで売られていたりするから。
20世紀末から始まったデジタル革命によって、2020年代はもう、様相がすっかり変わってしまったのだ。
インターネットが普及し始めたのはウインドウズ95が爆発的に売れた1995年以降のことで、携帯電話も95年の阪神・淡路大震災以降、爆発的に売れ始めた。
そして携帯電話に、インターネットを使える「iモード」や「メール」がつき、「写メール」というカメラ付き携帯が普及し、そして2007年にはiPhoneという米アップル社が開発したスマートフォンが登場した。
2009年にはGoogleの作った携帯OSを搭載したAndroid端末が発売開始され、Windows95発売の20年後の2015年には、スマートフォンを多くの人が持つようになった。
スマホでは、写真を撮るのも動画を撮るのも簡単で、しかもそれをSNSを通じてすぐにインターネット上で公開できる時代。
今や小中学生でもスマホを持っていて、親や友達との連絡もスマホで行う時代。
黒電話や公衆電話ですら、もはや令和の子供にとっては知らないし、使わないものになってしまった。
こういった時代背景だから、昭和が舞台の物語では、いろんなことを生徒にいちいち説明するのだが、もう全くピンとこないのは明らかだ。
私が子供の頃は「明治は遠くなりにけり」なんて言葉を聞いたものだが、今や「昭和は遠くなりにけり」ですね。